面談記録業務はSalesforceとベルセールスAIでここまで自動化できる|肥後銀行がチャレンジするAI活用と次の一手
株式会社肥後銀行
高田さま(室長)、中村さま、宮崎さま

熊本エリアに根ざした株式会社肥後銀行(以下:肥後銀行)では、法人・個人向け金融サービスからDX・地域支援まで幅広く提供されています。
本記事では、同行がどのようにして面談記録業務の課題を解決し、現場の負担軽減と記録の標準化に向けた取り組みを進めているのか、経営企画部デジタル戦略室 高田さま(室長)、中村さま、宮崎さまにお話をお伺いしました。
1.導入前の課題──旧音声録音システムで顕在化した「使いづらさ」と品質課題
肥後銀行では、法人・個人向けの金融サービスに加え、DX推進や地域支援にも幅広く取り組んでいます。同行では、金融庁のガイドラインに対応するため、顧客との面談記録業務の効率化を目的として、預り資産業務において音声録音システムの運用を開始していました。
顧客との面談記録を正確に残すことは、金融機関にとって法的な義務であり、避けて通ることのできない業務です。一方で、現場からは次第に不満の声が上がるようになっていました。
マイクの準備に1分・インターネット接続に1分…毎回の準備が煩雑に
利用機器の持ち運びや取り回しに手間がかかるうえ、音声品質やテキスト化精度にも課題がありました。文字起こし機能自体は備わっていたものの、現場では「実務で使えるレベルではない」という評価であり、過去の交渉内容を参照するためには音声を再度聞いて確認するしかない状況でした。
こうした課題は預り資産業務に限らず、面談記録業務全般に共通するものとして認識されるようになり、業務フローの抜本的な見直しと、現場負担の軽減が求められる状況となっていました。
2.導入までの経緯──既存改善の限界とベルセールスAI選定の理由
旧音声録音システムで顕在化していた課題に対し、肥後銀行では既存の仕組みを前提とした改善にも取り組んでいました。しかし、いくつかのアプローチを試みたものの、根本的な解決には至らなかったといいます。
そうした中、同行全体として、面談記録業務を含む業務フローを抜本的に見直す方針が示されました。改めてソリューション検討を進めるタイミングで候補に挙がったのが、ベルセールスAIでした。
検討の過程で、ベルセールスAIは同行が抱えていた課題と期待に合致する点が多くあることが分かりました。
現場の使いやすさと品質の両立
録音にスマートフォンを用いることで、これまで課題だった持ち運びや取り回しの煩雑さが一気に解消されます。加えて、音声品質やテキスト化精度も高く、旧システムに対する現場の不満点をクリアできる見込みが立ちました。
「入力しなくてよくなる」というコンセプト
「音を取ることは目的でもないし、書き起こすことも目的でもない。入力しなくて良くなることが、私たちのゴールなんです」
この考え方は、ベルセールスAIのコンセプトと完全に一致していました。Salesforceとの自動連携や、AIによる要点整理・抽出機能を活用することで、面談記録業務そのものの在り方を変えられると期待されました。
SaaSへのチャレンジという決断
従来は、マイクなどの機器を資産として購入・保有する形でシステムを運用していましたが、この方法では新しい技術への追随に限界がありました。
「もっといいサービス、もっといいサービスを求めていける。それがSaaSの魅力だと思いました」
SaaSという形で継続的に進化するサービスを取り入れること自体が、変化に適応し続けるための戦略的な選択でもありました。
営業力の可視化への期待
導入検討時には、録音データを活用した営業スキルの可視化にも期待が寄せられていました。
「優秀な行員や未熟な行員の営業スキルの可視化を将来的に実現できる。そんな話を聞いて、これはすごいと思いました」
この点は営業部門からも支持を集め、プロジェクトを後押しする要因となりました。すでに導入していたSalesforceと自動連携できる点も、現実的な判断材料として大きなポイントだったといいます。
3.活用方法──全行展開と“必須化”で進めた活用定着のしかけ
現在、肥後銀行では営業店・本部を含めた全行員がベルセールスAIを利用しています。特に顧客との面談では利用を必須とし、面談記録業務の効率化を全行的に推進しています。
活用範囲の広がり
当初は既に音声記録を実施していた預り資産業務からスタートし、その後、渉外活動全般へと活用範囲を広げていきました。現在では社内会議や全体会議、営業推進会議など、議事録作成の用途にも活用が広がっています。
「社内会議の議事録作成に活用してもらうことで、業務が効率化される実感を得られると思っています」
「いきなりお客様との面談で使うのではなく、まずは社内で試せる環境を用意したことで、利用者が増えていることを実感しています」
この“ライトな使い方”が、心理的なハードルを下げ、定着を後押ししました。
コンプライアンス強化への展開
さらに、ベルセールスAIで取得した全文テキストデータを、内製開発したモニタリングシステムにインプットし、交渉内容をコンプライアンス観点でチェックする取り組みも進めています。
「音声データを取るそもそもの理由は、手で記録を残さなくていいようにすることでした」
この考え方が、結果として新たな価値創出にもつながっています。
4.導入しての成果・効果──数字と現場の実感から見える変化
劇的な時間短縮
預り資産業務を中心に、以下のような具体的な成果が現れています。
- 面談記録作成時間が1日当たり約60分→20分以下に短縮(ヒアリングベース)
- CRMへの入力時間が約75%削減
- 「成績がいい方ほど、やっぱりお客様のところに行っていますし、電話もしていますし、しっかりと接点を取っているからこそ、残すものも比例して多くなるんです」
つまり、最も忙しい、最も成果を上げている行員ほど、この効果を強く実感できているのです。

CRM記録の品質向上
これまで行員が自身の手で入力していた記録は、どうしても記憶や主観に左右されるものでした。ベルセールスAIによって面談内容がもれなくデータとして残されるようになったことで、行員自身が気づけていなかった情報や会話の流れが可視化され、客観的な気づきが生まれています。
これらのデータは結果として銀行の資産として蓄積され、営業活動の質向上や分析活用への期待が高まっています。
働き方改革への貢献
入力・記録業務の負担軽減により、営業活動に割ける時間が増えています。さらに注目すべきは、残業時間への影響です。
「営業店では、残業時間は減っています。それは間違いなく言えます。ベルセールスAIのおかげで全部が全部というわけではないですけど、貢献は大きいと思っています」
面談記録作業に起因して発生していた時間外業務が減少し、基本的に残業をしない体制で営業活動を行える環境づくりに寄与しています。結果として、業務全体の進め方や働き方にも良い影響が出ています。
今後の課題
一方で、預り資産業務以外の面談記録業務については、現時点ではまだ活用が十分に進んでいるとは言えません。今後さらなる活用促進に向けた取り組みが必要な段階にあることも、率直に語られました。
5.営業現場からの声
品質・精度の良い音声とテキスト、要約データを取得できることで、契約時の重要な証跡として残せている点は大きな効果です。特に金融業界では、記録を残すこと自体が法的義務であり、この品質向上は単なる効率化を超えた価値があります。
現場から上がった生の声
- 「面談後の記録時間が圧倒的に減った」「記録をしなければならないという心理的負担が減った」
業務時間の削減だけでなく、「やらなければならない」というプレッシャーからの解放という、目に見えない効果も大きいのです。
- 「ネクストアクションで、タスクの抜けが減った」
メモを取るよりもしっかりと記録が残るため、特にたくさん話した時の漏れがなくなりました。
- 「音声を残すことで、契約時の重要な証跡として重宝できている」
コンプライアンス観点でも、確実な記録が残せることの安心感は計り知れません。
新人教育の標準化でも
- 「新人は、これがないと残せないって言われるレベルで使っています」
以前は先輩によって記録の残し方がバラバラでしたが、今はベルセールスAIによって一定の形式で記録が残るようになりました。これにより、記録業務における品質の底上げと標準化を同時に実現しています。
議事録作成の効率化における声
- 「議事録はベルセールスAIで残しておけばよい、という考え方の転換が進んでいます」
社内会議でも活用が広がり、議事録作成そのものの効率化にもつながっています。
営業行員の意識変化
特筆すべきは、ツールを使うことで生まれた「客観的な視点」です。
- 「今まで考えたことないことを、考えているんです。自分で入力していた時は気づかなかったことに、システムの出力を見ることで気づくようになっています」
- 「このように話すと、このような記録になる。それを踏まえて、話し方や残し方を意識するようになりました」
自分の商談を客観的に見直すきっかけとなり、営業スキルの向上にもつながる可能性が見えてきています。
6.今後の展望──データ活用へつなげる次のステップへ
データ活用の次なるステージへ
今後は、Salesforceに蓄積されたテキスト化データを起点に、NBA(ネクスト・ベスト・アクション)や優秀行員の行動分析などの利活用を目指しています。
「データさえ溜まれば、なんでもできると思っています」
しかし、多くの銀行が「やりたいことはあるけれど、いざデータを確認すると全然入っていない」という壁に直面します。肥後銀行の場合、ベルセールスAIに入力業務を任せたことで、この「データが溜まる」という最も重要な基盤ができつつあります。
「データを溜めることに、時間や労力を割かなくていい。だからこそ、溜まったあとに何をするかに集中できるんです」
その先には、「提案、成約まで自動化」といった、リアルと非リアルの融合の実現も展望として語られました。
「土台」としての位置づけ
中村さまは、ベルセールスAIの将来的な役割をこう表現されました。
「お客さんとの面談、そこは個人のスキルを活かす場だと思うんです。でも、そこから先の文字に起こして記録するっていう話は、もう人のスキルじゃなくてもいい。ここに流し込めば全部できちゃいますよ、っていう感じになっていてほしい」
個人の営業力は各々が磨き、記録業務は標準化してシステムに任せる。この役割分担が明確になることで、組織としての営業力の底上げと、個人の成長の両方が実現できると考えています。そして、お客様へのより良い提案へとつながっていけば、と考えています。
融資業務への展開も視野に
現在は預り資産業務を中心に展開していますが、融資業務の記録への展開も検討が始まっています。金融機関にとって最も重要な業務の一つである融資記録を、同じ品質で標準化して残せるようになれば、さらに大きなインパクトが期待できます。
7.まとめ──SaaSという選択がもたらした「わがままを言わない」文化

肥後銀行では、旧システムでの「取り回しの煩雑さ」「音声品質・テキスト化精度」といった課題を背景に、ベルセールスAIを”入力しなくてよくなる"ための基盤として位置づけました。
利用必須化と全行展開により利用率は60%から75%に向上し、面談記録の時間短縮(1日60分→20分以下)や心理的負担の軽減といった効果も現れています。営業店では残業時間が減少し、基本的に残業をしない体制での営業活動が実現しつつあります。
SaaSがもたらした意外な副産物
中村さまからは、SaaS導入によって得られた意外な気づきも語られました。
「SaaSはやっぱりわがままを言えない。それを盾にできるんです。『これはSaaSだから、この機能がないんだから』って言える」
内製開発やスクラッチ開発では、「こうしたい、あれも入れて」とわがままを言い続けることができてしまいます。しかしSaaSでは、ある程度は自分たちが合わせる必要があります。
「割り切って仕事を進められる。私自身のスキルアップにめちゃくちゃ繋がっているところがあります」
システムに業務を合わせる部分と、業務にシステムを合わせる部分の見極め。この判断力が、組織全体の効率化につながっているのです。
これからの肥後銀行
今後は蓄積データの活用へと取り組みを広げていく考えです。それが、交渉記録を残したほうが良い、という意識につながり、さらにデータが蓄積される好循環が生まれ、ベルセールスAIが「記録業務の土台」となることを期待しています。
溜まったデータを使って、NBA、優秀行員の分析、そして、お客様へのより良いご提案へ、といった次のステージへ。肥後銀行のDX推進は、確実に次のフェーズへと進んでいます。
「記録を残すことは価値を生み出さない。でも、残さなければならない。だからこそ、そこに時間を使わず、お客様のために、お客様との時間を増やしたい」
肥後銀行の挑戦は続きます。


